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東京地方裁判所 昭和33年(ワ)3171号 判決 1959年10月12日

原告 柳原安造

外十九名

右二〇名訴訟代理人弁護士 糸賀悌治

福田末一

被告 国際交通株式会社

右代表者 荒川三治

右訴訟代理人弁護士 青木定行

山田璋

中野慶治

主文

被告は

(一)原告柳原安造に対し別紙目録(一)記載の株式について同人名義に

(二)原告笠原玄一に対し別紙目録(二)記載の株式について同人名義に

(三)原告酒井章に対し別紙目録(三)記載の株式について同人名義に

(四)原告野々垣弘に対し別紙目録(四)記載の株式について同人名義に

(五)原告沼尻健三に対し別紙目録(五)記載の株式について同人名義に

(六)原告柳原信二に対し別紙目録(六)記載の株式について同人名義に

(七)原告銭谷敏夫に対し別紙目録(七)記載の株式について同人名義に

(八)原告笠原敏暉に対し別紙目録(八)記載の株式について同人名義に

(九)原告柳原徹に対し別紙目録(九)記載の株式について同人名義に

(十)原告持田八郎に対し別紙目録(十)記載の株式について同人名義に

(十一)原告持田新一に対し別紙目録(十一)記載の株式について同人名義に

(十二)原告米田武に対し別紙目録(十二)記載の株式について同人名義に

(十三)原告秋元幸男に対し別紙目録(十三)記載の株式について同人名義に

(十四)原告銭谷フミ子に対し別紙目録(十四)記載の株式について同人名義に

(十五)原告軍地政明に対し別紙目録(十五)記載の株式について同人名義に

(十六)原告堀越正邦に対し別紙目録(十六)記載の株式について同人名義に

(十七)原告武井成男に対し別紙目録(十七)記載の株式について同人名義に

(十八)原告宮台孝之に対し別紙目録(十八)記載の株式について同人名義に

(十九)原告宮台誠之助に対し別紙目録(十九)記載の株式について同人名義に

(二十)原告古橋光に対し別紙目録(二十)記載の株式について同人名義に

それぞれ株主名簿の記載事項を書き換えよ。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告二〇名訴訟代理人は主文と同旨の判決を求め、その請求原因として、

「原告等は、いずれも、昭和三三年二月一〇日訴外大平武二より被告会社株券を別紙目録記載のとおり株券の裏書によつて譲り受けた。よつて原告等はそれぞれの株券について同人等に株主名簿の名義書換を求めるため本訴に及んだ」と述べ、

立証として、甲第一ないし四号証の各一、二、第五号証、第六号証の一ないし四及び第七号証の一ないし三を提出し、証人大平武二の証言並びに原告笠原玄一、同酒井章及び同柳原安造(第一回第二回)の各本人尋問の結果を援用し、乙号証の成立は全部認めた。

被告訴訟代理人は「原告等の請求を棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする。」との判決を求め、答弁として、

「原告等の主張事実を否認する。

(一)  本件譲渡の裏書方法は、譲渡人大平武二が株券にその印鑑を捺印しただけであつて、その署名又は記名がなく、而も右捺印は被告に届け出た印鑑によるものでないから、裏書の方式はその所定の要件を欠いている。従つて本件譲渡は無効である。

(二)  本件株式について、昭和二五年九月二五日右大平武二と被告との間に第三者に譲渡しない旨の契約がある。本件譲渡はこの譲渡禁止契約に違反するから無効である。」と述べ、

立証として≪以下省略≫

理由

成立について当事者間に争のない乙第一号証の一ないし一〇、同第二号証の一ないし一九、証人大平武二の証言、(一回)並びに原告笠原玄一、酒井章及び柳原安造(第一回)の各本人尋問の結果を綜合すると、原告等は昭和三三年二月一〇日頃訴外大平武二より同人名義の被告会社株券を別紙目録記載のとおり譲り受けたこと、及びこの譲渡の方法として右大平武二が各株券裏面の取得者氏名欄に同人の実印を押捺したにとどまり、同人の氏名を記さなかつたことを認めることができる。而して右認定を覆すに足りる証拠はない。

被告は右認定の譲渡方法は裏書としての要件を欠くから、譲渡は無効である旨主張するのでこの点について判断する。白地式裏書は株券の裏面に譲渡人の署名又は記名捺印するこにによつてなされることは法定されているが、本件のように譲渡人の捺印のみによつて記名を欠く場合にあつても、譲渡の効力は否定さるべきものではない。蓋し記名株式の譲渡について裏書の方法として記名捺印が認められているのである以上、裏書人が捺印したときは何人がその記名を補充しても差支えない。従つて、株券に裏書人の捺印のみで記名を欠いたままで株券が譲受人に交付され、譲受人より名義書換のため株式会社に呈示された場合に記名を欠いている理由により株式の譲渡を無効とすることは余りにも形式的な解釈であつて裏書に記名捺印を認めた法の趣旨にも背くことである。なお被告は右捺印が被告会社に届け出た印鑑と相違する旨主張するが法は裏書について会社に届け出た印鑑に制限することを認容していないから、この主張は失当である。

次に、被告は訴外大平武二と被告との間に本件株式について譲渡禁止の契約があり、本件の譲渡はこの契約に違反する旨主張するが、商法第二〇四条第一項の法意に照らしても明らかなように右のような譲渡禁止の契約は何等株式の譲渡の効力に影響を与えるものではない。従つて右契約の存否について判断するまでもなく被告の主張は失当である。

以上判断したところによれば、原告等の本訴請求は正当であるからこれを認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判長裁判官 長谷部茂吉 裁判官 上野宏 中野辰二)

<以下省略>

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